北千里動物病院

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更新日 2017-04-08 | 作成日 2017-04-08

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は日常診療で比較的によく遭遇する疾患です。
この病気は簡単に言えば子宮内に感染が起き、膿がたまるという病気です。
中年期以降の雌犬に比較的多いですが、まれに若くても発症している例をみます。
また、猫でもまれにみられます。

人の場合は月経によって子宮内膜が新しく生まれ変わるというメカニズムをもっていますが、犬は人の女性とちがって月経(生理)というものがありません。
ちなみに、雌犬の発情出血と人の生理を混同されている方がおられますが、そのメカニズムは全く違うものです。(犬では発情出血後に排卵が起きます)

犬の場合、発情が起きるとその後黄体ホルモンが長期分泌され、子宮内膜の増生が起き、内膜肥厚が進行してゆきます。
内膜肥厚がさらに進んでいくと囊胞性増殖が起き始め、感染に対して弱い形態的特徴を持つようになっていきます。
また、黄体ホルモンが子宮内の免疫抵抗力を減退させるので、発情後の黄体期に感染に対して弱くなり、子宮蓄膿になりやすくなります。

出産が行われる場合には子宮内膜の刷新が行われますが、そうでない場合は発情ごとに内膜増生が進むことになります。
毎年子供を産んでいる犬ではその都度子宮内膜が新しくなるため子宮蓄膿は少なく、避妊手術をせずただ発情を繰り返している犬では年ごとに子宮蓄膿の可能性が高まっていくというのはこういった理由からです。
一回でも子供を産んでたらその後ずっと子宮蓄膿にならないと思いこんでいる飼い主さんも時々おられますが、上記の理由を理解されると間違いであることに気づいてくれます。

子宮蓄膿の原因菌としては大半が大腸菌であり、その他ブドウ球菌、連鎖球菌、サルモネラ菌などが検出されます。

避妊手術をしなかったら必ず罹る病気というわけではありませんが、避妊手術していれば罹ることのない病気であることは確かです。


症状

症状としては、開放性(膿が子宮から膣へ出ていくタイプ)のものは、陰部から膿状、悪臭のするおりものが出てきます。
非開放性の場合は、膿が子宮内に蓄積されていく一方で、排出されないため飼い主さんが全身的異常に気づくまで放置される傾向にあります。
元気がない、食欲不振といった漠然とした症状のみを呈する場合もありますし、下痢や嘔吐を伴うもの、多飲多尿を伴うものなど様々です。

検査

まず飼い主さんからの臨告聴取、身体検査を行います。
その上で子宮蓄膿症を疑う場合、通常血液検査、レントゲン検査、腹部超音波エコー検査を行います。
ほとんどの場合、この三つの検査で確定診断に至ります。
血液凝固機能異常などが疑われる場合は追加検査を行います。

治療

子宮蓄膿症では、蓄膿子宮・卵巣全摘出術が治療の根幹となります。
子宮蓄膿症は重度の化膿性疾患です。
治療が遅れれば子宮破裂や腹膜炎、敗血症、エンドトキシンショック(細菌性のショック)、多臓器不全、血液凝固障害といった非常に危険な事態に陥る事が予想されます。
上記の理由より、確定診断がつき次第速やかに外科的処置をとります。
既に危機的状態に陥っている場合はその治療を進めつつ、なるべく早期に外科的処置を行います。

薬剤(プロスタグランジンなど)を利用して子宮収縮を促し排膿させ、子宮蓄膿を治療した報告等もありますが、当院ではこの治療法は選択しておりません。



実際の症例

8才の中型犬メスのわんちゃんです。
最近元気がなく、食欲も落ちてきた。下痢に近い軟便をするという事で来院されました。
また、避妊手術はしておらず、最近の発情については記憶が定かではないとのことでした。


腹部超音波エコー検査


拡張した子宮断面が確認されました。
写真で黒く丸く写っているところが膿をためている子宮の断面です。
通常、ノーマルな状態の子宮はエコーで確認できるかできないかというレベルです。

血液検査の結果、白血球(好中球)の異常増多、軽度肝機能障害が認められました。
レントゲン検査でも拡張した子宮が確認されました。


手術


拡張した子宮
通常の子宮の何倍もの大きさに拡張しています。
(犬の子宮は双角子宮と言って、角のように二股に分かれています)

定法通り蓄膿子宮・卵巣を摘出しました。
ちなみに、この手術でもSURG・RXという血管シーリング機が大活躍しています。
術後、わんちゃんはみるみる回復し、退院していきました。

子宮蓄膿症は中年期以降の雌犬の疾病としては比較的多く、しかも発見が遅れれば致命的な病気です。
避妊手術をしていないメスのわんちゃんで、陰部から膿性のおりものがでているのを発見した場合はもちろんのこと、発情終了後ある程度時間経過したあとに元気や食欲がなく、お腹が張ってきた、多飲多尿ぎみ、下痢、軟便が続くなどの症状が見られる場合は子宮蓄膿症を疑ってみる必要があります。
すでに敗血症に陥っている例、DIC発症例、腹膜炎併発例などでは救命率が低くなってしまいます。
おかしいな?と感じたら早めに動物病院へ行かれることをお勧めします。
また、避妊手術をしていればかからない病気ですので、こういった意味でも避妊手術を受けさせる利点は大きいと感じます。


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