北千里動物病院

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更新日 2017-04-08 | 作成日 2017-04-08

停留睾丸・精巣腫瘍

出生後オスの精巣が陰嚢内に降下せず腹腔内や鼠径部の皮下などにとどまっている状態を停留睾丸(陰睾)といいます。
停留睾丸では、精巣が体温の温度下にあるため精子形成が阻害されます。
(陰嚢内の睾丸は通常体温より低い温度で維持されています)
また、停留睾丸は精巣腫瘍の発生率が明らかに高くなります(犬での話です)。
(6~10倍腫瘍発生率が高くなると言われています)
ちなみに、猫では停留睾丸の腫瘍発生はかなり稀です。

精巣腫瘍にはセルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫の三種があり、
停留睾丸の症例ではセルトリ細胞腫と精上皮腫の発生率が高くこれらの腫瘍ではリンパや臓器への転移が時折みられます。

腹腔内の停留睾丸が腫瘍化した場合、腫瘍が大きくならなければなかなか症状を現さず、発見が遅れる場合があります。

セルトリ細胞腫の場合はエストロジェンというホルモンを分泌するため脱毛や皮膚炎をおこしたり、乳房が発達するなど雌性化がみられる場合があります。(間質細胞腫でも雌性化がみられることがあります)
また、このホルモン過剰によって貧血が引き起こされることがあり、重度の貧血に陥ってる例では予後不良となります。

停留睾丸(片側腹腔内)のワンちゃんの例

術前検査として血液検査、レントゲン、腹部超音波検査を行いました。










超音波エコー検査所見です。
超音波検査で腹腔内停留睾丸の発見が出来ない場合もありますが、今回はすぐに発見できました。
エコーでの発見率はおよそ90%です。







超音波エコー検査で腹腔内精巣の位置が確認されていましたので、このワンちゃんでは切開創を最小限に留めることができています。
切開創直下に見えるのが停留睾丸です。
左に見える縫合部は正常精巣(陰嚢内)の摘出創です。








左が正常の精巣(陰嚢内)
右側の若干青っぽく小さい精巣が停留睾丸(非腫瘍化)です。
腫瘍化していない停留睾丸は軽度に萎縮しているのが普通です。


精巣腫瘍の例







右側腹腔内精巣の腫瘍化症例です。
かなり大きくなっており、一部大網に癒着しています。








摘出した精巣腫瘍(セルトリ細胞腫)
この例では貧血や雌性化、皮膚症状などはみられず、腹部の疼痛が主訴でした。







老犬の精巣をスキャンした際にみられた腫瘍

陰嚢内の精巣でも腫瘍化がみられることは高齢期に良くあります。
陰嚢ごしに精巣をさわってみて固いものに触れる場合は要注意です。







上記エコー症例の精巣断面
腫瘍が認められます。




脱毛を伴う症例


症例によっては脱毛を伴うものがいます。
この症例は他院にて去勢手術を受けたそうですが、実際には腹腔内に停留睾丸が存在し、それが腫瘍化していました。

去勢手術では陰嚢内に降りている片方のみが切除されている状況でした。





開腹し、腫瘍化した精巣を摘出しました。
病理組織検査の結果はセルトリ細胞腫+精上皮腫でした。







半年後の状態です。
ふさふさに毛が生えました。
驚くほどの変貌ぶりでした。






停留睾丸をもつワンちゃんは腫瘍化する前に早く摘出することを強くお勧めします。

去勢手術と称して正常側(陰嚢内)の精巣だけを摘出された陰睾症例を時折診ます。
確かに子供を作れないと言う意味では去勢ですが、精巣腫瘍の危険因子を残し、また腹腔内陰睾であってもホルモン分泌は行われるので性格を穏和にするという去勢手術の利点や会陰ヘルニア、前立腺疾患予防の利点は損なわれています。
そういった理由から、当院では停留睾丸症例での去勢(犬)では正常側も停留睾丸も両方摘出する事を常としています。



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