北千里動物病院

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更新日 2017-04-21 | 作成日 2017-04-08

頚椎椎間板ヘルニア


ここでは犬の頚椎椎間板ヘルニアの一般的な解説と北千里動物病院での治療、検査外科手術の内容等のご紹介、また、実際の患者さんの例をご紹介いたします。

頚椎椎間板ヘルニア


一般的な椎間板ヘルニアの基礎情報については、犬椎間板ヘルニアのページをご覧ください。
頚椎ヘルニアであっても、胸腰椎椎間板ヘルニアであっても基本は同じで、
椎間物質や、線維輪が逸脱して脊髄を圧迫することが病気の原因となっています。
ただし、頚の場合は腰や胸のヘルニアと多少の違いがあります。
まず好発年齢ですが頚椎ヘルニアは中高年期の病気です。
若い犬で頚椎ヘルニアはあまり診ることはありません。
また、頚椎は空間的余裕が胸腰椎よりも広いため、四肢麻痺に至る例は少なく、
どちらかというと「痛み」がメインで、進行例でも不全麻痺(足の動きは変だが、歩行は可能)が多いです。

頚椎椎間板ヘルニアの症状


初期では頚の痛みが一番多い症状です。
・上目遣いで頚を動かさない。
・頚を左右に振ったり、上方に反ったり、下方に屈曲させるとキャンキャンとなき叫ぶ
・頚の筋肉が時折ピクピクと動く(チック)
・何かの拍子で頚に痛みが走ると,キャンキャンとなきわめく。
・頚が痛いので動きたがらないが、基本的に歩行そのものに異常は無い

もう少し進むと
・歩行は出来るが前肢の動きが鈍い
・どちらか片側の前肢・後肢の動きが鈍い,あるいは四肢の運動失調
(※ 頚椎ヘルニアで後肢麻痺が主体であった症例もあります)
・頚の痛みは継続、あるいは頚の違和感が継続

さらに進むと
・四肢麻痺 起立不能

もっと進むと
・呼吸筋麻痺、死亡
このレベルの頚椎ヘルニアは個人的には診たことがありません。
診る前に亡くなっているか、このようなレベルの症例数が非常に少ないかだと思います。

この病気にかかりやすい犬種


頚椎椎間板ヘルニアはどのような犬種でも罹る可能性はありますが、当院での症例でお話しすると、ミニチュアダックス、フレンチブルドッグ、チワワ、パピヨン、ビーグル、ヨークシャーテリア、トイプードル、シーズー、ミニチュアシュナウザー、ミニチュアピンシャー、パグ、キャバリア、ポメラニアン、雑種などで診る事が多いです。

治療の流れ

基本的に、胸腰椎のヘルニアと同様の検査を行っていきます。
頚椎ヘルニアは中高年期の疾患であるため、鑑別すべき疾患を除外する必要性があります。

頚椎ヘルニアと診断され当院に来院される患者さんで、最終診断がヘルニアでないものが少なからず存在します。
いままでの診療で、別病名を告げた内容を思い返して列挙すると、

・脊髄梗塞 線維軟骨塞栓症
・腫瘍性疾患(椎体骨肉腫、他の悪性腫瘍の脊髄転移、椎体転移)
・てんかん、てんかん焦点発作
・脳内病変
・外耳疾患、内耳疾患
・歯牙疾患
・唾液腺疾患
・多発性筋炎
・無菌性皮下脂肪織炎
・整形外科疾患(肩関節不安定症や前肢の関節疾患等)
・頚椎滑り症
・環軸亜脱臼
・頚椎骨折
・脊髄空洞症
・キアリ奇形

などです。

頚が痛そうな、前足の動きの悪そうなそぶりをみせるこれら疾患を除外する必要があります。
神経学的検査、除外診断のための検査を行い、その上で頚椎椎間板ヘルニアの症状との合致が見られれば頚椎ヘルニアを診断上位に持って行けるということになります。
最終的にはCTやMRI等で確定になります。
脳病変や脊髄髄内病変を疑う場合はMRIが必要です。

治療

1.頚の痛みが主体で、運動失調がみられない場合
内科治療と安静、光線力学的治療など
治療に反応が悪い場合手術を考慮

2.頚の痛み+軽度運動失調
内科治療と安静、光線力学的治療など
治療に反応が悪い場合手術を考慮
薬剤で痛みが取れても運動失調の改善が無い場合はオペ適応と思われる

3.四肢運動失調、繰り返す痛み
手術適応
MRIまたはCTで病変確認のうえ手術を適用

比較的軽度の場合は注射、光線治療、内服などを組み合わせながら経過観察(安静)を行います。腰のヘルニアと同様です。
2週~4週間の安静(ケージレスト)が必要になります。
内科治療に関してもノウハウの蓄積がありますので、在宅・通院治療の場合、
その実施方法等、十分な説明を行い治療を行っていきます。

当院の方針として、なんでも外科に頼るという方向性では全くありません。
切らずに済む症例は、まずもって内科治療と安静です。
これは外科適応だとある程度確信できる症例に関しては、その旨をはっきり飼い主さんに告げるというスタンスで診療を行っています。



椎間板ヘルニア手術


手術準備風景

Leica Microsystems社製外科顕微鏡
フルハイビジョンビデオカメラシステム


※胸腰椎椎間板オペと用意するシステムは同じです

実際の症例


前肢を主体とする運動失調、頚部痛で来院されました。
レントゲン検査で第3-4頚椎間にボタン状石灰化陰影を確認。
神経学的検査とその他除外診断から頚椎椎間板ヘルニアと診断。
内科治療を2週続けた結果、痛みは改善したが、運動失調は継続していました。
飼い主さんと話し合いの上MRI検査を行いました。



第3~第4頚椎椎間板ヘルニアと確定
MRI像で黒い影が圧迫しているところがヘルニアです。
画像診断医からは神経圧迫率が非常に高く、オペ適応と言うことでした。

手術

ここからは手術の写真が出てきます。見たくない方は読み飛ばしてください。











頚椎ヘルニアにもいろんな術式があります。
当院の基本の術式はベントラルスロット法です。
頚の腹側からアプローチし、椎体に穴をあけます。
その穴を通じて逸脱物質を除去する手術です。
頚部腹側には非常に重要な血管や神経、気管、食道が分布しています。
これらをうまく避けて椎体(頚の骨の腹側)に到達します。
筋剥離の範囲は最小で、生体侵襲性の低い手術様式です。
手術部位周囲に重要組織があるので手術する側が注意深く対応する必要があります。
全ての頚椎ヘルニアがベントラルスロット法の適応であるわけではありません。
椎間物質が右や左に強く局在する場合などは他の手術様式も検討します。
椎体に穴を開けるので、術後椎体骨折のリスクや脊椎の不安定を生じるリスクがあります。
スロット孔3.5ミリ以下は物理的に椎間物質除去が困難だと思われます。
小型犬は椎体自体が小さいので、椎体幅に対して相対的にスロット孔が大きくなるリスクがあります。
しかし個人的感想では、現在の所ベントラルスロット法であまり不都合を感じたことはありません。
国内のベントラルスロット法の症例報告でも、100例以上の症例報告でほとんど全て満足のいく結果が得られているようです。



まず 全身麻酔
仰向けになってもらい頚の毛を刈ります。
体軸がまっすぐになるよう保定します。
消毒の繰り返しを行います。


プラスティックドレープ、布ドレープ適用、
切開開始します。


筋間を分離、細血管はマイクロバイポーラで分離


気管を確認、反回喉頭神経と気管を一緒に左側へ


頚動静脈、迷走神経、食道を確認し右側へ
温生食でぬらしたガーゼで組織を保護し、開創器で緩く開創
なるべく気管や神経、血管に圧迫が加わらないよう留意します。


椎体に到達
周囲の開創器の圧迫を極力抑えます。
時間を決めて開創による圧迫を解除します。


切削開始。
真ん中の白スジ状のものが椎間板です。
ここからは、まっすぐに、ズレないように地道に切削していきます。
切削時は水流を使って骨組織に熱損傷を負わせないようにします。
この症例では椎体幅は12ミリでした。スロット作成は3.7ミリと2.5ミリのバーで、
約4ミリのスロット孔を形成しました。
手術前にはレントゲンやCT、MRI画像から前もって手術計画を練ります。
場所は?、深さは?、スロット孔の幅は?、それを作成するには何ミリのバーを用意する必要があるか?、吸引管の太さは?、スロット内腔をチェックする探子のシリーズはどうする?、逸脱物質が硬かったり癒着していたら?、静脈洞出血があった場合の止血は?・・・
などなど、まえもって十分考えて準備対応するわけです。
行き当たりばったりや、必要器具の不足はこのオペではNGです。
たりない器具は現場で代用がききません。
なにせ相手は4ミリの穴の中なのです。
最終切削は、高速回転バーの種類を替えて、ちびちび切削しては確認をくりかえします。
高速回転しているバーの下には重要な脊髄神経が控えています。
術者が相当気を遣う場面です。


最終局面の切削を終えた状況
(顕微鏡拡大画像)
椎間板背側線維輪(白い縦筋)と、脊柱管内に侵入し充満した椎間物質(黄色っぽい)が見えます。
このあと、背側線維輪をマイクロ用のメスで切り、マイクロキュレットで除去していきます。
その後、L字型のマイクロプローブや、ディセクター、脳神経外科用アリゲーターなどを使い、椎間物質の除去を行っていきます。
この症例では椎間板物質が大量で、背側縦靱帯がなかなか見えてきませんでした。
ゆっくり確実に椎間物質を集めては除去、吸引、洗浄を繰り返していきました。
椎間物質をある程度除去できた時点で背側縦靱帯が確認されたのでそれを切離しました。
白く見える神経硬膜が腹側に戻ってきて、目視できるという状態に持ち込むのがオペの目標です。


椎間物質除去、洗浄後
(強拡大顕微鏡像)
神経硬膜(スロット孔の長軸に沿って見える白いもの)がハッキリみえます。
この子の場合は、麻酔から覚醒時点で既に神経機能が改善していました。
頚の痛みも消え去り、数日で退院の運びとなりました。
頚椎ヘルニアの場合、術後7日以内に劇的に改善する事がわりと多いです。
時間経過の長いものや多発性のものなどでは改善に時間を要し、
横臥状態など、症状が重篤であったものほど回復に時間を要すると思われます。
ある報告では頚椎椎間板ヘルニア手術症例の5%で術後になんらかの合併症となっています。個人的にはこんなに多くないと考えてます。実際まだ頚椎ヘルニアのオペで術後合併症の経験がありません。
しかし、ハイリスクな部位のオペである事は確かだと思います。






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CT検査

当院では、葉月会CTセンターで撮影を行っています。
CTセンターは当院徒歩圏内にあります。
葉月会ではMRI撮影も可能です。
MRI、筋電図に関しては、京都ARでの依頼検査も行います。

葉月会へのリンクLinkIcon

神経学的検査

頸椎椎間板ヘルニアを疑わせる症例では、神経学的検査を行います。
様々な反射を確認し、およその病変部位の予測や、病期の判定を行います。

頸椎椎間板ヘルニアの
臨床グレード分類

頚椎用 簡易臨床グレード分類です
グレードⅠ
頚の痛みのみ。歩行可能 
グレードⅡ
繰り返される頚の痛み。または自立歩行可能な不全麻痺
グレードⅢ
自立歩行不可能な麻痺

ヘルニアで来院の方へ

来院される方は、できる限り現在処方されている薬剤をお持ちください。薬剤名がわかる場合はその方がより有用です。現在服用中の薬によっては特定の内科的治療薬がすぐに使えない場合があります。
また、今までの経過、検査結果などお持ちでしたら持参いただくと良いと思います。
とりあえず来院前にお電話ください。事前にアドバイスできる事柄もありますのでお勧めします。